Author:安藤心吉
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60才・A型
平成20年3月11日(火)
私が殺されたた日
外出中に自宅にいる父から電話・・・
(父は電話を頻繁に触っていますが、数十回に一回くらは通じるようです。)
私:はい心吉です。
父:えっ!シンキチ??? シンキチは死んだはずだが・・・
私:今こうやって話しているじゃないですか。
父:いいや、シンキチは死んだ事になっている。
私:じゃー何故死んだ人間に電話するんですか?・・・・・・・
父はどうも私に電話したのではなく、電話のそばに大きな文字で書いてある他の人の電話番号と間違えたのかもしれません。
毎日下の世話をし、着替えをさせ、食事をつくって食べさせ、洗濯や掃除をして面倒を見ている私に「死んでいる筈だ」とは頭が狂ったか・・・恐らく妄想と現実の区別がつかないのでしょう。
それにしても、いくら妄想の中でも毎日ケアしている私が父の心の中で死んだことになっているとは、驚きを超えて悲しくなるばかりです。
帰宅後、私の足を見せて「私は死んでいません。ここに足が2本ありますよ。」というと、「それは良かった。」と言って笑っています。
たった一人の同居家族である私が殺されてしまった日でした。
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平成20年3月18日(火)
徘徊が始まった
介護認定2から3への再審査依頼後のメール
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平成20年3月13日(木)
ケアマネージャーのT様
昨日はお忙しい中、調査にお越し頂き誠に有り難うございました。
必要な追加情報が発生したのでメールでお知らせ致します。
今朝ほど、父はいびきをかいて寝ていたので、
その間にと思いバルコニーの掃除をして部屋に戻りましたら、
父の姿が消えていました。
その30分位の間に、一人で出て行ってしまったのです。
近くの行きそうな場所をくまなく捜しましたが姿が見えません。
範囲を広げて車で約30分位捜したのですがどうしても見つかりません。
仕方なく警察に捜索願いを出しにいこうかと家に帰ったところに
近所の方が門のところに来てくれて
「おじいちゃんが・・・で立ち往生していますよ」と教えてくれました。
迎えに行き、手を取って帰ってきましたが、何度も前につんのめり転びそうでした。
特に階段では、私が少し手を離すと私の体にぶつかって来るほどふらふらした状態でした。
そして困った事に、父の意識は「何でも出来ると思っている」ことです。
ですから、注意しても無駄なのです。
父の言い訳は、「子供にお菓子を買いに行きたかった。」です。
妹は「父からもらう食べ物はいらない」と何時も言っていますが、
そんな妹の言葉も全く忘れているのか、人の言うことは馬耳東風なのでしょう。
やはり、階段は非常に危険ですし、このような事が起きる以上玄関ドアの内側からも
父の手が届かないカギが必要かもしれません。
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平成20年3月19日(水)
人は時に感謝し、時に恨む。
人を恨まず常に感謝の心に満ちあふれている人は最高に幸せな人である。
他人がどうしてくれたからではない。
回りの人がどうしようと、一見悪く見えてもなお感謝出来るのはその人の能力である。
どのような現象にも深い理解と先を見通す力があれば感謝出来る筈。
感謝する能力が不足していれば、回りの人の好意でさえうっとうしく思えたり、逆恨みさえすることが多くなる。
若い人の中にも恨む人が大勢いるが、そんな人は理解力、分析力、先見の明に欠けているのである。
年齢に限らず頭が老化すると、この「感謝する能力」が減少してくるようだ。
父は89才だが、発する言葉の中にたくさん「有り難うございます。」が出てくる。
これは、まだ感謝能力がかなりある証拠と見る。
最近その父が私を恨むことが多くなった。
自分では「自分に向かって言っている」と言いたいようだが、明らかに私に向かって言っている。
「こんちくしょう」「非人間」「ばかやろう」と言った暴言を吐くようになった。
私に面と向かってではなく、ベッドの中で空に向かって言っている。
朝、父の汚れたリハビリパンツを取り替え、ズボン下と靴下とズボンを着せ替え、時には汚物のついた尻を綺麗にして・・・朝食をつくり・・(なんとかこぼしながら自分で食べている)食器洗い、洗濯から生活の全ての面倒をみていても私を恨むのである。
恨む理由は、
1. お金が自由にならない。
2. 老人ホームのように家から一人で外出できないようになっている。
3. デイサービスに毎日行けない。
この三つが大きな理由だと解釈している。
1. のお金に関しては、過去何度もお小遣いを無くしてきたから・・・と、近くのコンビニで大好きなチョコレートを二袋も買って一日で食べてしまったこと・・・
(父は糖尿であった・・・今は完治している。)
2. は家を出るとコンクリートの階段が危険なことと、徘徊防止である。
(過去、バルコニーで後ろにひっくり返り後ろ頭を7針縫っているし最近では玄関で
も数回転んでピンポン球より大きなたんこぶをつくっている。)
3. 介護認定が2の為、デイサービスに行ける日には限度がある。
いずれも父の健康と安全の為と介護認定を理解してもらうためだが、それを何度言い聞かせてもその時は理解するもののすぐに忘れてしまうのである。
忘れているから、「何でお金を持てないのか?」「何故一人で外出できないのか?」「なんで今日デイサービスに行けないのか?」理解できず、危険や健康を害すことなど到底予測出来ず、予定外にデイサービスに行けないことも理解できないのだ。
その結果、不満だけが残って私を恨むのである。
父が一人になった時、あまりに大きな声でわめきちらし(近所まで聞こえる)、玄関をどんどん叩くので、「転ばぬ先の杖」より今の精神状態の安静のほうが大事であると思って、昨日から糖尿の再発や外階段の危険や徘徊をも覚悟して、小遣いを渡し自由に外出できるようにした。
このまま暫く様子を見るしかないだろう。
この話を読んで、読者は「なんてひどい父親だろう」と思うかもしれない。
しかし、恨まれてさえ私は父に感謝している。
それは、背中で「おまえが30年後にこういうふうになるなよ。・・こうならない工夫を今からしておけ。」と教えてくれていると解釈しているかに他ならない。
どんな現象にも分析して理解すれば、感謝できるのである。
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平成20年3月19日(水)16:00
約2時間の散歩??
今日はデイサービスがない。
夕方5時に訪問介護のヘルパーさんが来るだけだ。
朝一番から父は「あそこ(デイサービスのこと)に行く」と言い続けている。
私が「今日はヘルパーさんが来る日でデイサービスは無いよ。」と何度言っても数分後には同じ言葉を繰り返している。
あまりしつこいので朝食後に「散歩でも行きましょうか。」と言うと父は喜んで玄関に向かった。
父が自分で玄関のカギを締めて開けることが出来るかのテストもあったので、敢えて家のカギを渡して「一人で家を出るときは必ずカギを掛けて下さい。カギを忘れるとドロボウが入ってくるかもしれませんからね。」と説明すると父は「そうだね。」と言って玄関のカギを掛けた。10分位かかってやっと一つのカギを締めることが出来た。・・・やれやれ
門を出ると、父は「歩いて行くの?」と聞く。
「散歩だから歩きだよ。」と言うとけげんな顔をして、「あそこに車で連れて行って欲しい。」と言う意味の(具体的に何と言ったか忘れたが)言葉を言った。
とぼけて「あそこってどこ?私にはあそこではわからないから道案内して下さい。」と言うと父はやっと歩き出した。・・・「確か学校のそばだった・・・そうだ小学校はどこ?」と聞くので小学校の方角を教えた。
超ロースピードの父に先導されながら、犬と私は父に従った。
家から小学校まで私の足で約5分の道のりだが、学校に着いたのは40分以上後だった。
ふうふう言いながら父は目指す「あそこ」に向かって懸命に歩く。
小学校のところで、既に限界のようだったので、「コーヒーでも飲みますか?」と尋ねると、「欲しい」と言うので自動販売機の缶コーヒーを買った。
妹の娘が通う幼稚園が小学校のそばにあって路肩に座れるので、コンクリートの上に腰かけて父はコーヒーを「美味しい」と言って飲んだ。
暫くそこで休んでいると、「もう大丈夫だ、行こう」と言って父は立ち上がった。
「おじいちゃん、デイサービスに行こうとしているの?今日はデイサービスの日じゃないよ。」と言っても私の言葉に耳を傾けてくれない。
「デイサービスの場所までは今までの4倍は歩かなきゃ行けないよ。もう帰ろう。」というとやっと少し帰る気になったようだ。
そこに雨がぽつりときたので・・・ラッキー・・・「雨だね。もう帰ろう。」と言うとやっと納得したようだ。
父は再び歩き出したが、方向は家と反対方向だ。
「おじいちゃん、家は逆だよ。」というと「あそこの角まで・・」と言って前に歩き出す。
そんな感じで結局2時間の散歩となった。
帰途、父はへろへろ状態で、「おぶろうか?」と言っても拒絶し、「大丈夫だ、歩ける」と言って聞かない。何度も転びそうになりながらやっとの思いで家にたどり着いた。
帰宅後昼食を出して、「今日の夕方5時にヘルパーさんが来るよ。」と言うと、「へー!家に来るの?」・・・数分後「あそこに行く。」・・・私「今日はヘルパーさんが来る日でデイサービスがないよ。」・・・数分後「あそこに行く」が夕方まで続く。・・・こうやって書いている間にも・・・
なんでこんなに書いているかと言うと・・・仕事に集中できないんです。
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平成20年3月20日
父の散髪
朝、姉からの電話
「今日お墓参りにいくのよ。(何代だか忘れたが年間維持費みたいな)1万円どうする?」
私「立て替えておいて・・・」
そういえば今日は春分の日である。
父の介護をしているとそんな事さえ頭の中になかった。
というのも、父は朝から「あそこに行く」と何度も繰り返す。
「今日はいく日じゃないよ。今度の月曜日だよ。」となんど言ってもその時には納得するのだが、数分後には又「困ったな・・あそこに行く。」と繰り返す。
「今日は祭日だから休みだよ。」と言っても一瞬の理解で、すぐに忘れる。
昨日ヘルパーからの書き置きで「床屋さん」の事を書いてあったのを思いだして、近くの天然温泉に行くことにした。
そこには温泉と床屋があるのだ。
朝食を終え、温泉に到着・・父の散髪を済ませて温泉に手引きしてゆったりと浸かってもらった。
洗髪し、体も綺麗に洗って約2時間半が経過。
私はいやいやながらやってはいないのだが、神経をすり減らしてへとへとだ。
さあこれから父の晩飯の支度だ。
休む暇もない。
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(株)TRUTH 吉野大観
平成20年3月21日
帰宅すると玄関の鍵が開いている。
何故なのだろう?
私が帰宅したとき、9割は玄関ドアのカギが開いている。
「ドロボウに入られるから、玄関は閉めて下さい。」と毎回・・ここ数年言ってきたが、全く効果なし。
玄関のカギが締まっているときは、父が寝ている時のみと言って過言ではない。
恐らく一人で居ることが耐えられないのだろう。
外出する者がカギを持っていることがわからない。
だから、「帰宅したときに困らないように」との父なりの配慮なのだろう。
ヘルパーさんが来る時も概ね前もって玄関を開けてしまう。
階段の危険や徘徊防止のみではなくドロボウや強盗や悪徳業者から父を守るためにも外からカギを掛けていたが、自由を奪うとわめき、叩き、しまいには私を恨むので最近は危険を承知で外カギを開けている。
危険か、父の自由外出かその選択は難し過ぎる。
専門家はどう判断するのだろう?
世の中でだれがアドバイスしてくれるのだろう?
一度役所に相談してみようか?
どんな答えが返ってくるのだろう。
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(株)TRUTH 吉野大観
平成20年3月22日
おねしょの始末〜買い物
「ああ!もう駄目だ!死んだ方がいい・・・」
叫び声が父の部屋から聞こえてくる。
まだ外は暗い。
父の声で目が覚め・・しかたなく「どうしたの?」と言うと、「こんなバカは死んだ方がいい・・殺してくれ!」と言っている。
寒いので手早くズボンとシャツを着て父の部屋を開けると、父はベッドの脇でズボンを半分おろしていた。
触ってみると衣服はかなり湿っていてオシッコの臭いがした。
ベッドのシーツも大きな円状に濡れている。
父は「おねしょ」をする自分を認められないのだ。
昨日は父のオシッコの始末で洗濯が2回、今日も恐らくそんな感じだろう。
洗濯をしながら朝食の準備をしていると、やはり私に背を向けたままなにやらしゃべり続けている。
その殆どが「あそこに行く。・・」である。
朝食を済ませ散歩に行く前にトイレにいってもらった。
私が朝食の後かたづけをしていると、父は又なにやら私の助けを呼んでいる。
トイレの前で少しズボンをおろして(トイレのドアが開いた状態)、「トイレは何処か?」と聞く。
「トイレは目の前だろ。」というとトイレの横にあるゴミ箱を指さして「これか?」と聞く。
既に「トイレ」が何かもわからなくなってきたようだ。
父の尻拭き
トイレに座らせた後、暫くして又何やら言っている。
「来てくれ」とかなんとか私を呼ぶのならまだ良いのだが、少し大きな声でブツブツ言っているだけなのだ。
駆けつけてみると、排便の後おしりが上手く拭けないのだと解った。
立たせた状態でおしりを拭くのはちょっと大変だ。
なかなか汚物がとれない。
ティシューを湿らせて数度拭いてから乾いたトイレットペーパーで拭くのである。
散歩
トイレが終わってから散歩に連れ出した。
私は、数時間買い物に出かけなければならいので、その前に散歩で満足してもらおう・・・と言うのは綺麗な言い方だが、実は「疲れてもうらおう」と言うのが作戦だ。
散歩で疲れていれば、私の外出中に徘徊する可能性は低くなると考えたのだ。
この散歩作戦は当たった。
僅か300mの道のりを往復するだけで約1時間半もかかって帰りはかなりきつかったようだ。
父がギブアップすればおぶって帰ろうと、「おぶろうか?」と聞くと意地をはって「いや大丈夫・・」というので、結局1時間半もかかったのだ。
これでやっと買い物に行ける。
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