Author:安藤心吉
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60才・A型
平成20年3月18日(火)
徘徊が始まった
介護認定2から3への再審査依頼後のメール
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平成20年3月13日(木)
ケアマネージャーのT様
昨日はお忙しい中、調査にお越し頂き誠に有り難うございました。
必要な追加情報が発生したのでメールでお知らせ致します。
今朝ほど、父はいびきをかいて寝ていたので、
その間にと思いバルコニーの掃除をして部屋に戻りましたら、
父の姿が消えていました。
その30分位の間に、一人で出て行ってしまったのです。
近くの行きそうな場所をくまなく捜しましたが姿が見えません。
範囲を広げて車で約30分位捜したのですがどうしても見つかりません。
仕方なく警察に捜索願いを出しにいこうかと家に帰ったところに
近所の方が門のところに来てくれて
「おじいちゃんが・・・で立ち往生していますよ」と教えてくれました。
迎えに行き、手を取って帰ってきましたが、何度も前につんのめり転びそうでした。
特に階段では、私が少し手を離すと私の体にぶつかって来るほどふらふらした状態でした。
そして困った事に、父の意識は「何でも出来ると思っている」ことです。
ですから、注意しても無駄なのです。
父の言い訳は、「子供にお菓子を買いに行きたかった。」です。
妹は「父からもらう食べ物はいらない」と何時も言っていますが、
そんな妹の言葉も全く忘れているのか、人の言うことは馬耳東風なのでしょう。
やはり、階段は非常に危険ですし、このような事が起きる以上玄関ドアの内側からも
父の手が届かないカギが必要かもしれません。
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(株)TRUTH 吉野大観
平成20年4月5日午后
私が迎えに行ったのは3時過ぎであった。
千葉の介護施設において昼食までは良かったが、3時のお茶が自分で飲めなかったようだ。
茶碗を自分の口に持っていけないのだ。
少し風邪をひいているようで熱が7度9分あった。
いつもなら手を引いてもらう程度で車まで歩き自分で車に乗れた(やっとだが)のだが、その日の父は足が前になかなか出なかった。
それでもやっとの思いで乗車した。
車中いつもの父とは様子が違った。
後部座席で殆どしゃべらずボーッとしていた。
家について・・・いつもなら何とか自力でおりるのだが、全く足が外に出ず自力で降りることができなかった。
父を抱えて車から降ろしたが、全く歩けない。
妹婿に協力してもらって階段を登り何とか家の中にたどり着いた。
介護施設に電話して、昼食の内容を聞くと、普通のご飯だったと言うのでお寿司を買ってきた。
もう自分でお寿司を自分の口に運ぶこともできなかった。
お寿司を持った手が口に行かないのだ。
お寿司が顎の下にあって、それを食べようと口をぱくぱくさせていた。
私は、お寿司を三分の一程度に切ってぱくぱくしている父の口に運んだ。
いつもの食欲は無く、私の四分の一程度で「もういい・・・お腹一杯」と言った。
つい最近まで私以上に食べていたのに・・・
父をベッドに運び寝かせた。
突然、「あああああああ・・・」と叫ぶので父の部屋に行ってみると、手が上から引っ張られるような仕草で両の手を振るわせている。
「大丈夫だよ・・・何も無いよ。」と言うと今度は腕をベッドの両脇に届くように開いて端を強く掴んで「ああああああ・・・」と叫びながら腰を上下にバタバタと振るわせている。
「大丈夫だよ・・何も無いよ。」と何度も言い聞かせやっと静まった。
この夜はそんな事が何度も起きた。
翌朝「あああああああああああうぅぅぅうううううう・・」という叫び声で目が覚めた。
父はパンツを半分おろした状態でベッドの下で仰向けになってわめいていた。
ズボン下もシャツもシーツも全てオシッコで濡れていた。
まず、ズボン下を脱がせてリハビリパンツを脱がせると、(下半身が裸の状態で)「オシッコが漏れる」と言うので、父を持ち上げてベッド脇のポータブルに腰かけさせようとした。
父の後ろから両脇を抱えて移動を試みている最中に父は腰を硬直させて移動に抵抗する。
こんしんの力でポータブに座らせた瞬間に放尿した。
下着を着せ替えて、シーツを新しいものに取り替えてベッドに寝かせ朝食の準備にとりかった。
やはり朝食も自力では食べられない。
小さなお茶碗半分程度のおじやを長時間かけて食べさせた。
汚れた衣類を洗濯していると又「あああああああああああ・・・・」と叫ぶ。
夕べと同じだ。
手を上に上げて両手と腰を振るわせていた。
そんな日曜日が過ぎて月曜日になったので、朝一で介護センターに連絡し、父の急変に関して相談した。
風邪もあったので、近くの医師に往診してもらった。
ケアマネージャーさんにも来てもらって医師とケアマネさんと私の三人で今後の方針について話し合った。
医師とケアマネさんが来ている時までは自力で食べ物を口に出来なかったが、3時頃に「腹が減った」という父に温かいオジヤを持っていくと・・・先ほどの状況がウソみたいに自力で食べ始めた。
自力はまだ立てない。
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(株)TRUTH 吉野大観
父が階段で横転して大怪我をした。
カギのかかった門を乗り越えて、門の外階段に着地する際に転んだのだ。
幸いにして、腕を手と足の打撲と擦り傷で済んだが、もし頭をコンクリートの階段に強打していたら命に関わっていただろう。
徘徊防止のために門に南京錠を付けていたが、門を乗り越えてでも外に出ようとする父を止めることも出来なくなった。
「徘徊やむなし」・・・か?
早朝・・・ピンポーンとチャイムが鳴った。
「どなたですか?」
玄関の外から・・「おじいちゃんが大変なんです。」
「すみません。 ちょっとお待ち下さい。」
急いで衣服を着替えて玄関を開けた。
「おじいちゃんが、道で倒れているんだって!」・・・上階に住んでいる妹だった。
家の中を見渡すと父の姿がない。
妹は「じゃーね」と言って上階に姿を消した。
門の外には見知らぬおばあちゃんがいて、「お宅のおじいちゃんが坂道で倒れているんです。」と
私はそのおばあちゃんに道案内をしてもらい、父の倒れている場所に急行した。
父は、炉端に仰向けに寝ていた。
回りには近所の人や散歩中のひとが父を取り囲んでいた。
「すみません、お世話をかけます」と言って、父にかけよった。
「おじいちゃん・・大丈夫?」と声をかけると、「大丈夫」と言って起きあがろうとした。
「そのまま・・そのまま」
おでこから少し血が出ていた。
どうも前のめりに転んだようだ。
取り囲んでいる人々は心配そうに父を眺めている。
その中の近所のひとらしい中年の女性が、「救急車を呼びました。」と言った。
「どうもありがとうございます。 お手数をおかけしました。」と言い、万一もあるのでそのまま安静にして救急車を待った。
程なく救急車が到着した。
病院が決まったので、私は一旦家に帰り、保険証を小銭を持って病院へ追いかけた。
2時間もしただろうか、
救急診療室の前で待っていた私に、看護師さんが「こちらへどうぞ」と治療室に案内してくれた。
父は救急治療室の中のカーテンで囲まれたベッドに横たわたっていた。
「おじいちゃん・・・大丈夫?」と聞くと、「うん・・大丈夫」と返事。
しかし、少し青ざめているようにも見えた。
暫くすると先生が来て、「頭に異常はないようです。・・お帰りになって結構ですよ。」・・・
やれやれ・・・一安心ながら複雑な気持ちで父をつれて帰途についた。
この1年父は曜日や時間の区別がつかなくなっている。
夜中でも、早朝でも何時も親切にしてくれるデイサービスに行きたがるのだ。
夕方5時頃にデイサービスの人が父を送ってくれるのだが、
その数分後には、「あそこ(デイサービスのこと)に行かなくちゃ!」と言う。
外が暗くてもなんでも、寝るまで何度でも、デイサービスに行こうとする。
夜中にトイレに起きた時もデイサービスに行こうとして玄関を開けようとする。
早朝も同じだ。
例えば朝6時に起きたとしよう。
9時にデイサービスの人が迎えに来るまで、恐らく3分おきにはデイサービスに行こうとする。
「あと3時間で来るよ」、「あと2時間で来るよ」と言っても3分後には、デイサービスに行こうとする。
私が起きているときは、「まだだよ・・・家の中で待って下さい。」と言うが、寝ている時は止めようがないのだ。
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(株)TRUTH 吉野大観
犬の散歩を終えて帰宅。
父が私の顔を見て、
「あなたは誰ですか?」と聞いた。
この言葉は初めてであった。
いつかこんな日が来ると思っていたが、意外に早かった。
もう1年以上、父は私が息子である認識はないが、少なくとも家の人間であり、世話をしている人か兄とでも思っているようだった。
それが、ついに初めて会った人のように「あなたは誰?」ときたのだ。
私は、この5年間父を老人ホームに入れずにいた。
それは、父にとって家族と暮らすのが父の幸福にとって最善であるとの判断があったからだ。
しかし、父の認識の中で私が家族でなくなれば、父は一人と同じである。
家族という認識がなくなっても父を家で世話する意味があるのだろうか?
今後の課題である。
そうだ、今日は気晴らしにパチンコでもしようかな?
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